こんなシンデレラは闇へ帰れ

 

27 名前: こんなシンデレラは闇へ帰れ1・その1/3 投稿日: 2006/05/18() 01:55:32

むかしむかし、あるところに。
シンデレラというなまえの、うつくしくこころやさしいむすめがおりました。

けれども、シンデレラのくらしはしあわせなものとはいえませんでした。

おかあさんがなくなり、かわりにやってきたのは
いじわるなおかあさんとおねえさんでした。
ふたりは、いやなしごとをみんなシンデレラにおしつけて
ぜいたくにあそびほうけてばかり。
シンデレラはつぎはぎだらけのようふくのまま、まいにちのように
ふたりにいじわるをされてばかりいたのです――。

28 名前: こんなシンデレラは闇へ帰れ1・その2/3 投稿日: 2006/05/18() 01:56:10

「…なあ、やっぱりやめといた方がいいんじゃないか?」
髑髏印の魔導掃除機をガラガラ引っ張りながら仏頂面で現れたのは、灰色つぎはぎワンピース姿のシンデレラ蒼真。
「つか、この格好めちゃめちゃ歩きづらいんだけど。股スースーするし」
投げやりな口調といい、やる気のない態度といい、とても薄幸の主人公には見えない。
とりあえずコスチュームとシチュエーションさえ何とかしておけばいいという製作側の態度が見え見えだった。
「全くだ。そもそも配役に無理がありすぎる」
そんな現代っ子丸出しのシンデレラに、リヒターもため息混じりで答える。
どこか気だるげに窓辺に背を持たせかけ、逞しい腕を組んだアンニュイなその姿はさぞかしファンの心を掴んだことだろう。

…やたらとゴツくてケバくてマッシヴな黄色のドレス姿の継姉役でさえなければの話だが。
蒼真が必死で視線を合わせないように俯き、肩を震わせながら笑いをこらえているのも無理はなかった。
「誰だよ、この企画考えた奴…」
相談スレの>>153さんです。
「見つけたらマシンガンナイフの刑だな」
>>153
さん、頑張って避けないと全身穴だらけです。
「あ、あと俺的に大戦斧旋風は欠かせないかな」
>>153
さん、頑張って避けないと脳天から縦割りです。
「俺的に、とは何だ。正しい日本語を使え」
「はいはい」
「返事は一度」
「はーい」
流石はお兄さん体質、例え相手が二代目魔王であっても礼儀は正すリヒターだった。
例えその身に纏っている衣装がサテンのフリフリドレスと金髪縦ロールのヅラだったとしても。

29 名前: こんなシンデレラは闇へ帰れ1・その3/3 投稿日: 2006/05/18() 01:57:14

「まあ、それっぽい雰囲気になってきたところで…」
「とりあえずは台詞を読まんと展開がないからな」
やる気のなさを露呈しながら、シンデレラ蒼真と継姉リヒターがカンペに視線を落とした時――。


どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど!!!!!

「こ・ぉ・のクソガキがぁ―――――!!!!!」
凄まじい爆音と怒号と共に、
「なんでこの俺が主役じゃないんだ―――――!!!!!」
舞台セットを突き破らんばかりの勢いで、
「とにかくひとまずアルカードに会わせろ―――――!!!!!」
規格外のマッシヴなボディをぱっつんぱっつんのドレスに無理矢理突っ込んだ、
なんというか、ファンの皆様ごめんなさい、もうしません、としか言いようのない痛々しい物体が、





「シンデレラ、台所の掃除はもう済ませたのかしら(棒読み)」
「は、はい、お姉さま、今(棒読み)」
「まったく、あんたはいつも愚図なんだから云々(棒読み)」




……二人のカンペ棒読み芝居にすっかり無視されていた。